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山岳遭難ニュースを取りあげながら、安全な登山を考える

インターネットによって誘発される山岳遭難の事例 No.1

とあるSNSサイトでのuedayasujiさんの山行記録は2012年12月から始まっている。プロフィールから大阪在住、登山歴45年以上との記述から60歳前後だっただろう。

年齢に似合わぬ絵文字を多用した陽気で砕けた文章を書くユーザーで、「拍手」の数からも注目を集めていた人物だったと言えるだろう。

※拍手:記事を読んだ他のユーザーが付けるもので、その数が評価/人気/注目の一つの指標となる。

 

プロフィール [uedayasujiさんのHP] - ヤマレコ

 

「佐倉葉ウェブ文化研究室の作業報告書」 (佐倉葉ウェブ文化研究室様) がUedaさんのことを以前から書いている。以下をカテゴリーで抽出すると、他にも登山者に関するアクシデントの情報が多数ある。

blog.livedoor.jp

 

「佐倉葉ウェブ文化研究室」 (佐倉葉ウェブ文化研究室様) では、アウトドアSNSに関わる情報のアウトプットとして、SNSやインターネットによる功罪の「罪」となる「自己顕示欲充足システム」として機能した時の危険性を書いている。 

自己顕示欲充足システムに飲み込まれる登山者と事故の危険性 〜インターネットの普及による山行への影響について『ヤマレコ』を事例にして〜 < 佐倉葉ウェブ文化研究室

 

ここでは、Uedaさんのケースに絞って、その行動を以下に追ってみた。

 

最初の転機 注目を集めた『ウケ狙い』の山行記録

はじめの頃は一つの山行記録あたり0~2件程度だったコメントは、記録を重ねながら徐々に増えていった。7件目の記録となる2013.2月頃(釈迦ヶ岳)には、馴染みのフォロワー達とジョークを交えて、延々とコメント欄でコミュニケーションするようなスタイルが形成されていったようだ。

最初の転機は、この釈迦ヶ岳の記録だったのだろうと思う。冬山に「鰻重」を持参するという「ウケ狙い」と言える内容で、10件のコメントが入り、それらに一つ一つ返信して21件のコメント数を記録。「拍手」も普段の1.5~2倍の100件近く集まっている。

www.yamareco.com

https://archive.is/SZAIx

釈迦ヶ岳以降の山行記録では「ウケ狙い」「無茶・無謀自慢」の色をさらに強め、一層の注目を集めるようになってしまった。その背後には、SNSでの注目やフォロワー達の反応という甘美な誘惑によって、他者承認欲求の充足こそが彼の行動動機になってしまったと考えられる。

 

 

『注目』を求めてエスカレートしていく問題行為

釈迦ヶ岳の僅か2回後の山行となる2013.3月(御嶽山)では仏像を弄る鳥居を蹴るピッケルで鐘を鳴らすなど、問題行為の数々を公開するまでにエスカレートしてしまっている。一時のウケ狙いのために投稿した写真と呟きによって、世界中から糾弾され、社会的な制裁を受けてしまう「バカッター」と大差ない。

御嶽山の記録では、その端々に「罰当たり」という言葉を使っている。信仰対象や歴史的遺産を貶める行為が許されないと理解しつつも、誘惑に駆られて「ウケ狙い」に走ってしまったのだろう。

www.yamareco.com

https://archive.is/zTbYB

ウケ狙いの行為に加えて問題に感じたのが無茶・無謀な行動だ。御嶽山では、19時から翌日20時までと25間にわたる長い行動時間が記録に残っている。(途中で深夜2時から4時30分位までシュラフに入って休憩したようだ) さらに往復の運転もある。長時間の行動による疲労だけでなく、ナイトハイクという行動スタイルも遭難事故のリスクを高めることになる。 

この記録でも20件のコメントが集まり、うち6件が賞賛/賛同など肯定的なもの、3件が行動を諌めるもの、残り11件は本人からの返信だ。行動を諌めたコメントでは、フォロワーから行動時間のリスクを指摘されているが、本人には全く響いていないようで、この後もハイリスクな行動が改まることは無かった。それどころか「業界紙に山行記録を掲載したら、プロ登山家みたいに注目されて困ったなー」といった主旨の返信をするほどだった。

業界紙:Uedaさんの職業である運輸業界向けのものと思われる。

インターネットによって誘発される山岳遭難の事例 No.2 に続く